北欧・バルト三国で活躍する日本人研究者の紹介

齊藤 真理恵 Saitou Marie

ノルウェー生命科学大学 生物科学部 統合遺伝学センター(CIGENE)

テニュアトラックPI (助教相当)


現在、ノルウェーではどんな研究をされていますか?

進化生物学を専門としています。私の研究の目標は、ゲノム情報から、多様な生物種が進化してきた過程を明らかにすることです。有益な遺伝的変異を統計的・実験的に特定し、それらがどのように進化に寄与したかを理解することに興味があります。


進化生物学に興味をもったきっかけを教えてください。

もともと科学にも芸術にも関心があり、進路選択の際には文系に進むか理系に進むか迷っていました。進化学を学ぶことで、自然そのものと、自然の歴史の背後で起きた可能性のある物語の両方を科学の目から調べていくことができると思い、進化学を専門にしました。


現在の所属機関を選択した理由は何ですか?

世界中の機関に応募し、最初にオファーを頂いたのがCIGENEでした。研究関心がマッチしたことが一番ですが、研究のレベルが高く、サポート体制が強力で、街も様々な面で暮らしやすそうだったので決めました。

研究を行う上での一番の課題を教えて下さい。

大きな直近のゴールは、5年後のテニュア審査に通ることです。そのためには、安定的に外部資金を獲得して、研究費や自分の給与をカバーし、大学院生を指導して研究成果を上げ、講義の責任者として教育も担っていかなければなりません。


JSPSプログラムでの経験はノルウェーでの研究の役に立っていますか?

特別研究員-DC1時代には、最初のポスドク先となるバッファロー大学(米国)に短期留学し、ネアンデルタール人ゲノムの解析法などを学びました。また、博士課程2年次に参加したHOPEミーティングも海外キャリアへの後押しとなり、その時の参加者とは継続的に連絡をとっています。


日本と比べて、ノルウェーの研究環境について、どのような印象をおもちですか?

個人の経験なので一概には比べられませんが、研究をサポートする体制、人材の豊かさに驚かされました。サーバー管理、実験室管理、アドミンなどそれぞれに、高い意欲と専門性を持った担当者が揃っています。教員会議はURA(リサーチ・アドミニストレータ―)が事前に議題を整理し、短時間で終わります。また、着任早々、外部研究費担当者(ノルウェーの学振相当組織の勤務経験者)がやってきて、欧州の研究費システムについて説明をしてくれ、申請書も添削してくれました。


最後に、これからノルウェーで研究を始めようと考えている研究者にメッセージをお願いします。

ノルウェーは小さな国ですので、全学問分野が超強力というわけではないですが、ゲノム進化学の他にも、たとえば地学、サステイナビリティ関連の分野、海洋・水産関連の分野が強い印象で、資金も潤沢です。うまく専門分野がマッチすれば有益な研究経験が得られると思います。社会システムや治安もよく、英語は市井でも通じます。日本人は少ないですが、日本を訪れた経験や日本への留学経験がある研究者は比較的多いです。お待ちしております。


(2021年4月)

略歴

2020年11月- ノルウェー生命科学大学 生物科学部 統合遺伝学センター テニュアトラックPI

2020年2月-2020年10月 シカゴ大学 医学部 遺伝医学部門 博士研究員

2017年4月-2020年1月 ニューヨーク州立大学 生物学科 博士研究員


2017年3月 東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻 博士課程 修了 (JSPS特別研究員-DC1) 博士 (理学) 取得

2014年3月 東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻 修士課程 修了

2012年3月 東京大学理学部生物学科 人類学コース 卒業