北欧・バルト三国で活躍する日本人研究者の紹介

比嘉 涼子 Ryoko Higa

オスロ大学 University of Oslo

客員研究員  Visiting researcher


ノルウェーではどんな研究をされていましたか?

標的遺伝子改変モデルマウスやバイオインフォマティクス解析を用いて、脂肪の蓄積や脂肪細胞の性質、またそれに伴う全身のエネルギー代謝調節機構に影響を与える遺伝子の性差について明らかにすることを目的として研究を行っていました。


現在の研究分野に興味をもったきっかけを教えてください。

脂肪細胞にはいくつかの種類があり、エネルギー蓄積だけではなく、熱産生や全身のエネルギー代謝恒常性維持など様々な役割を持つ多様な細胞であることが興味深く、それぞれの脂肪細胞の発生、形質維持、全身に与える影響について関心を持つようになりました。


ノルウェーの研究環境について、日本と比べてどのような印象をお持ちですか?

ラボで働いている女性の数が男性より多いことが特に印象的でした。子供を育てながら研究者や大学院生として働いている方がほとんどで、また、男性の方も子育てに協力的な方が多かったです。そのためほとんどの方が夕方には仕事を終わらせて帰るので、お互いに協力しあって効率的に研究を進めていることが印象的でした。データなどの管理も共有のクラウドなどを用いているため透明性が高く効率的でした。また、異なるグループ間で実験手法や機器の使用方法などを共有したり、共同で研究を行ったりとグループ間の垣根が非常に低いように感じました。


ノルウェーでの生活はいかがでしたか?日本での生活と比べて暮らしやすいと感じたこと、逆に苦労したことなどあればぜひ教えてください。

ノルウェーでの生活は全体的に余裕があり、ワークアンドライフバランスが充実しているように感じました。ノルウェーの方々は親切なうえに英語にも堪能で、ノルウェー語がわからなくてもほとんど困りませんでした。また、電車やバスで30分以内のところに雄大な自然を感じられる湖や公園も多くあり、気軽にリフレッシュできる点も良かったです。ただ、やはり冬の寒さは厳しく、時々大雪が降ると交通機関が麻痺したり、道が凍結したりと雪国に慣れていない身には大変でした。また、日曜日や祝日は大体の店が閉まりますし、その前日も時短営業になったりするので、時々不便だなと感じることもありました。


最後に、これからノルウェーで研究を行いたいと考えている研究者にメッセージをお願いします。

冬の寒さは少し厳しいですが夏は涼しく、自然豊かでとても素晴らしい環境だと思います。また、治安も良く、水道水も飲めるなど日本と似た点も多いため、安心して暮らせるのではないかと思います。またノルウェーの方は英語に堪能ですので意思疎通に困ることもなく、非常に親切な方も多いです。もし、ノルウェーでの研究に興味があるのでしたらぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

(2023年10月)

略歴

2012年 静岡県立大学薬学部薬科学科卒業

2014年 静岡県立大学薬食生命科学総合学府薬科学専攻博士前期課程修了

2018年 京都大学大学院医学研究科博士課程修了 博士(医学)号取得

2017年-2022年 大分大学医学部神経生理学講座 助教

2022年-2023年 オスロ大学 医学部 客員研究員(JSPS特定国派遣研究者)

2023年-現在  ニューヨーク大学ランゴンヘルス糖尿病研究プログラム ポスドク研究員