北欧・バルト三国で活躍する日本人研究者の紹介

澤藤りかい Rikai Sawafuji

コペンハーゲン大学  University of Copenhagen

GLOBE Institute 外来研究員


現在、デンマークではどんな研究をされていますか?

古人骨の歯石(歯垢が石灰化したもの)や遺跡の土壌からDNAを抽出し、動植物のDNA配列を調べることで、過去の人々がどのような食物を食べていたか、何を遺跡に持ち込んだのか、など過去の人々の生活や文化を調べています。


現在の研究分野に興味をもったきっかけを教えてください。

もともと文系にも理系にも興味があり、人文学の分野に理化学分析を適用することで面白い研究ができるのではないかと考えていたところ、現在の分野(自然人類学/生物考古学)に出会いました。日本ではマイナーな分野ですが、とても面白いです!

現在の所属機関を選択した理由は何ですか?

コペンハーゲン大学は古代DNA/古代プロテオミクス研究の分野でトップクラスの研究機関であり、関連分野も含めると30以上の研究室が存在します。特に古代の土壌DNA分析で多くの成果があり、遺跡の土壌DNA分析を行いたいと考えていたのでここに来ました。また、夫も隣接分野(古代プロテオミクス)の研究者なので、家族で一緒に移動して研究できるというのも一つの理由です。


デンマークの研究環境について、日本と比べてどのような印象をお持ちですか?

日本より明らかに勤務時間が短いのに(土日や夜は働かない、夏休みは3週間など)、より多くの成果が出ているのがすごいと思います。研究のシステムを効率良く作っていて、ラボマネージャーの人達がサポートすることで、研究者が仕事しやすい環境を作っていると感じます。また、人々の関係がフラットで、お互いに協力して成果を出していこうという雰囲気があり、上下関係を気にすることなく意見を伝え、それが採用されるという点もいいなと思います。


デンマークでの生活はいかがですか?日本での生活と比べて暮らしやすいと感じること、逆に苦労していることなどあればぜひ教えてください。

全てが合理的かつシステマティックになっており、英語も通じるのでとても暮らしやすいと思います。また、全体として人々に余裕があり、公共交通機関などでもお互いに譲り合ったり、荷物を運ぶのを手伝ったりする空気があるのも素敵です。夏の開放感は格別で、晴れの日が多くてベランダに座って景色を眺めるだけでも気持ちがいいです。 一方で冬は暗くどんよりとした日が多いのが辛い所です。 また、役所の仕事も時々は間違っていたりするので、自分で判断して主張することが必要だと感じます。


最後に、これからデンマークで研究を行いたいと考えている研究者にメッセージをお願いします。

デンマークはワークライフバランスがよく、日本とは全く異なるので、住んでみると驚くことが多いと思います。成果を出すには長時間働く必要がある、ということはなく、いかに効率よく研究を進められるか、無駄な時間を 減らせるか、周りの人と協力して進められるか、が重要なのだと感じています。 長期あるいは短期でも、デンマークに住むことは自分の生活や研究を見つめ直すきっかけになると思います。 ぜひデンマークで北欧流の生活と研究を楽しんでください。

(2022年9月)

略歴

2011年3月 東京大学理学部生物学科卒業

2013年3月 東京大学大学院理学系研究科生物化学専攻修士課程終了

2017年6月 東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻博士課程終了

2017年4月 - 2020年3月 琉球大学医学系研究科研究員

2020年4月 - 現在 日本学術振興会特別研究員(SPD→CPD)

2021年9月 - 現在 コペンハーゲン大学 GLOBE Institute 外来研究員