北欧・バルト三国で活躍する日本人研究者の紹介

國光 太郎 Taro Kunimitsu

ノルウェー国際気候研究センター CICERO Center for International Climate Research

シニア・リサーチャー Senior Researcher


現在、ノルウェーではどんな研究をされていますか?

気候変動により温暖化する未来の気候下で、異常気象が農業・金融・人道支援といった社会の諸セクターに与える影響について研究しています。EU(Horizon)のプロジェクトの雇用なので、特にヨーロッパ外での事象(例えばカリブ海における熱帯低気圧被害)がいかにヨーロッパ社会(経済やインフラ)に影響を与えるか等に主眼を置いた研究をしています。


現在の研究分野に興味をもったきっかけを教えてください。

元々は物理の研究をしていたのですが、博士号取得後に勤務した文科省でエネルギー関連の業務に携わっていたこと、また留学したシカゴで盛んに研究されていた環境経済学に触れたこと、そして近年の世界的な関心の高まりの中、そういった社会に直結した分野に貢献したいと感じたことから今の分野にたどり着きました。

現在の所属機関を選択した理由は何ですか?

妻が先にノルウェーにテニュア・トラック職を得たので、ノルウェーで物理や公共政策のスキルを活かせる職を探したのが始まりです。職を探す際は研究職にこだわっていたわけではないのですが(分野もオープンに考えていました)、スキルが活かせる職が結果的に今の職場だったのが一番大きな理由です。


ノルウェーの研究環境について、日本と比べてどのような印象をお持ちですか?

職場の風通し・職員のストレスマネジメントに気を使っており、それらに対応するために人的資源を割くなど、研究のサポートに注力していると感じています。サポート体制は充実しており、多くのPhDや修士修了者が広報や資料作成などのプロジェクト管理に専任で充てられており、ストレスなく研究することができています。


ノルウェーでの生活はいかがですか?日本での生活と比べて暮らしやすいと感じること、逆に苦労していることなどあればぜひ教えてください。

治安がよく、生活インフラも非常に整っており、落ち着いて生活ができる環境だと感じています。寒い冬でも家の中は暖かく、通勤ラッシュでもほぼ座れます。ウィンタースポーツが好きな人にはたまらないかと思います。直接に困ることはあまりないですが、(おそらく他のヨーロッパ諸国同様)電車が頻繁に止まることなどでしょうか。あとはEU加盟国ではないからか、豊かさに比して国際ブランドの品揃えが少ない印象があります(例えばオスロにはユニクロや無印良品はありません)。


最後に、これからノルウェーで研究を行いたいと考えている研究者にメッセージをお願いします。

ノルウェーは人口が多くはない国ですが、気候変動を始めとしたいくつかの研究分野には力を入れており、広く門戸が開かれている印象があります。英語は(非英語圏では)世界一通じるレベルなのでまず困ることはなく、少しでも迷っているのであれば挑んでみると良いのではないかと思います。

(2023年2月)

略歴

2011年 東京大学理学部物理学科卒業

2013年 東京大学大学院理学系研究科修士課程修了

2016年 同博士後期課程修了 博士(理学)号取得

2016年-2021年 文部科学省事務官(大臣官房総務課、研究開発基盤課、原子力課)

2021年 シカゴ大学公共政策大学院修士課程修了

2021年-現在 ノルウェー国際気候研究センター(CICERO)シニア・リサーチャー